fx 初心者 一度きりの螢 One-time Firefly

 

 写真詩集第二部「不屈の太陽」編 Photo & Poem Part-II - 2/2

 

 

少年とブランコ

 

 

少年たちが
影踏みをしながら公園で遊んでいる
少年たちのすぐ後ろで赤茶けたブランコだけが
何事もなかったように夕闇に佇み
遥か虚空を見つめている

地球の重みなんか
全く知らないふりをして……

 

僕は少年たちの真似をしながら
慌てて自分の影を踏もうとしたが
影はそんな僕の浅はかな意志に感づいて
咄嗟に何処か遠くへ逃げてしまった

追いかけても
追いかけても……
影は遥か遠くの方から
地平線の向こう岸から
静かに手を振り「さようなら」をしている
まるで僕を冷たく嘲笑うかのように

 

一億年前の記憶
蘇る  永遠の原始

心に木霊して止まない
過去と未来をかけ違えたような錯覚
否、それは正しい記録かもしれないし
単なる時の嘘……かもしれない

 

暗闇の街の暗闇の中の電柱に
季節はずれの蝉の抜け殻が
まるで百円ショップの陳腐なイミテーションのように
必死に張り付いていた
そして  その真下には
剥がれかけた家出少年の顔写真と
忘れられた少年の思い出

 

影を失った僕は
途方に暮れながら慌てて後ろを振り返ってはみたが
影踏みをしていたはずの少年は
すでにいつか見た大人になっていて
影踏みの影も  何処か遠い世界へ消えていた

 

そして  寂しげな月明かりの下で
薄汚れ  赤茶けたブランコだけが
何食わぬ顔をしながら  いつまでもゆらゆらと揺れていた

僕の重みなんか
全く知らなかった……ふりをして

 

 

 

 

 

 

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最新更新日: 2010年12月18日 18:13

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