龍馬よ、いつまでそうやってアメリカの方角を向いているつもりだい?
もうそろそろ、おしまいにしようや。
昨年の5月、ふとした弾みで、南国土佐に足を踏み入れた。
生まれて初めて降り立った「よさこい」の大地には、灼熱の太陽の下、
NHKの大河ドラマ「龍馬伝」の宣伝ポスターと共に、Lisa Gerrardの独特な歌声が響き渡っていた。
見渡す限り、何処を見ても、長閑な山々、低いビル群、若者も疎らな車と人の往来、そして、
広い通りをしきりに「ごめん、ごめん」と謝り続ける、海外から寄せ集められた中古の路面電車たち。
「自由は土佐の山間より出づ」
の言葉通り、日本中を奔走しながら明治維新の立役者となった坂本龍馬を初め、
武市半平太、後藤象二郎、岡田以蔵、岩崎弥太郎、ジョン万次郎、そして、維新後、
自由民権運動の先駆けとなった「板垣死すとも自由は死なず」の板垣退助等、
確かに、此処、南国土佐からは数多くの強者が生まれ出ている。
僕は、今の「高知」ではなく、150年前の「南国土佐」を肌で体感するために、
一人、龍馬脱藩の道を辿り、途中、寂しそうな目をした元「土佐一本釣りの漁師」を名乗る
タクシーの運転手さんと岡田以蔵や武市夫妻の墓を詣で、
遂には岩崎弥太郎、ジョン万次郎、中岡慎太郎の生地を訪ねながら、
「志」半ばで散っていった多くの維新志士たちの無念さに想いを馳せながら過ごした。
旅の途中、地元暴力団と土地買収会社から坂本(龍馬)家代々の墓を50年以上も守り続けているという
屈強な歴史写真家に遭遇した。
彼は自らが師匠に言われた言葉を静かに反芻した。「写真を撮るなら、魂込めて、足の裏で撮れ」と。
彼のこれまでの言い尽くせない死闘と激動の人生を感じさせる真剣な眼差しと、真に迫った一つ一つの言葉に、
ズシン!ズシン!と脳天から何かが突き刺すような激しい痛みを覚えざるを得なかった。
今尚、日本人にとって大切な何かを命がけで守らんとし、
巨大なものに真っ向から戦いを挑み続けるこの「不動の戦士」との別れ際、
「維新はまだ終わってない」と言わんばかりに、僕の腰には三本目の「見えざる刃(やいば)」が
漆黒の鞘の中にずっしりと収まっているのを、人知れず実感していた。
001 桂浜・坂本龍馬記念館
002 桂浜①
003 桂浜②
004 桂浜③ 坂本龍馬像
005 桂浜④
最新更新日: 2011年01月19日 19:17
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